新たに創業・開業する場合、または開業後間もない時期は、事務所の初期費用・事業に必要な設備購入・店舗の内外装工事などの設備資金、創業後も家賃・仕入代金・人件費などの運転資金と多くの資金が必要になります。
「創業融資」はそのような新たに創業・開業する方や開業後間もない方の資金需要を解決するための融資制度ですが、自己資金なしで融資は受けられるのでしょうか?
本記事では、無担保・無保証で開業資金の融資を実行している日本政策金融公庫の創業融資制度「新規開業資金」で、自己資金なしで融資を受けることができるのか、自己資金はどの程度あればいいのかなどを解説していきます。
日本政策金融公庫の新規開業資金は、要件として自己資金の有無は定められていません。
以前の無担保・無保証で利用可能だった「新創業融資制度」では、「開業資金総額の1/10以上の自己資金が必要」という要件がありましたが、新創業融資制度は2024年3月31日で廃止となり「新規開業資金」に一本化されたため、日本政策金融公庫の創業融資では自己資金要件はなくなり、自己資金なしでも創業融資を申し込むことは可能となりました。
ただし、自己資金なしの場合、創業融資の申し込み自体は可能なものの、その後の融資審査に通らない可能性が非常に高くなります。
創業融資における自己資金とは、事業に使用する予定の自分のお金が対象となり、知人や親族からの借入や金融機関からの融資などで用意したような返済が必要なお金は自己資金として認められません。
創業時は事業の実績や継続的な売上・収入見込みがない、または少ない状態、さらに売上が現金として入金されるまでに相応の期間を要する状況での申し込みが当然となるため、融資した資金が返済されるのかという点から自己資金は融資審査における大きな判断材料のひとつになっています。
<自己資金として認められる可能性が高い例>
・現預金、貯金
・退職金
・生命保険などの解約による返戻金
・不動産や有価証券を売却したお金
・贈与や相続により取得したお金
・資本金
・創業のためにすでに費やしている費用(みなし自己資金)
<自己資金にならない可能性が高い例>
・親族や知人、金融機関から借りた返済が必要なお金
・カードローンやキャッシングなど返済が必要なお金
・タンス貯金
前述の通り自己資金は返済義務のない自分のお金となり、創業融資を申し込む際には最低でも半年以上の通帳原本を提出して担当者のチェックを受けることになります。
自己資金として認められるお金であるか、自己資金を一時的に多く見せるためのいわゆる見せ金などではないか、などが通帳や振込履歴などを基に精査されます。
そのため、タンス貯金のような通帳から出所が追えないお金は、融資においては自己資金として認められません。
また、口座に急に多額の入金があってそれが自己資金の場合、例えば贈与などで取得したお金であれば、贈与契約書などにより返済は不要なお金であることが確認できるようにするなど、出所や根拠を証明できる資料を予め用意しておくようにしましょう。
創業融資を受ける場合、自己資金はどの程度あればよいのでしょうか。
状況によるため一概に金額を言いきることはできませんが、以下の実績や情報などは非常に参考になりますので解説していきます。
大前提として、創業融資を受けられる金額は、設備資金や運転資金から導き出した必要な開業資金総額から自己資金等を引いた、不足している金額となります。
これまで500件以上の創業融資をサポートしている当センターの実績では、自己資金は融資希望額の1/4程度という状況になっています。
また、日本政策金融公庫では融資先企業の情報を蓄積しており、新規開業企業の実態を把握するために「新規開業実態調査」として様々な属性や集計情報を毎年公開しています。
2024年度新規開業実態調査によると、創業時の資金調達状況は以下となっています。
種別 | 平均額 | 総額に占める割合 |
自己資金 | 293万円 | 24.5% |
金融機関からの借入 | 780万円 | 65.2% |
その他 | 124万円 | 10.3% |
総額 | 1,197万円 | 100% |
※参照:日本政策金融公庫2024年度新規開業実態調査
開業資金の総額は平均で1,197万円、内訳として自己資金は平均で293万円(24.5%)となっており、自己資金割合は当センターの実績とほぼ同じくらいの約1/4という平均値になっています。
併せて、創業時の金融機関からの借入額(創業融資など)は平均で780万円となっていますので、創業融資を受けられるのはこれくらいの金額が目安であると言えるでしょう。
もちろん前述の通り、創業融資は必要な開業資金から自己資金等を引いた不足額のため、店舗や設備の必要性や販売単価の違いなど、業種や地域によっても必要な開業資金総額は変わってきますので、必要となる設備資金・運転資金、売上の見通しなどが適切であるかの整理・見直しを行うことが大切です。
これらの情報はしっかりとした根拠や分析、計画によって創業計画書・事業計画書として形にする必要があります。
創業計画書・事業計画書の内容や整合性は融資審査を左右する非常に重要なものになるため、創業融資を検討する際は、創業融資のサポート実績がある専門家を活用することが多くなっています。
そうは言ってもビジネスチャンスを逃してしまうから迅速に開業したい。
でも自己資金なし、または自己資金が少ないという場合は、以下のような対応が考えられます。
まず考えられる対応としては、不動産や有価証券、その他価値のある資産を売却して現金化することです。
前述の通り、自己資金なしとアリでは全く状況が変わってくるため、資産がある場合は現金化して自己資金を用意するのが一番の近道です。
また、資産をそのまま事業で使用する場合は、状況によっては現物出資として資産を市場価格で自己資金として考慮できる可能性もありますので、融資担当者へ相談してみましょう。
少しでも自己資金を増やすために、家族や親族へ相談し贈与してもらうという手段もあります。
自己資金とするためには、借入金ではなく返済義務のない贈与金である必要があります。
この場合は返済義務のないことを示すことができるよう、贈与契約書を締結して融資申し込みの際に提示できるようにしておきましょう。
また、融資には直接関係ありませんが、贈与の場合は贈与税が発生しますので、必要に応じ贈与税の申告を行うようにしましょう。
日本政策金融公庫の創業融資制度「新規開業資金」は基本的に無保証・無担保で利用することが可能ですが、本人が保証人になることで状況が変わるかもしれませんので、日本政策金融公庫に事前に相談してみましょう。
ただし、保証人となった場合は、万が一、開業した事業が軌道に乗らず返済できない状況になっても、保証人に融資額の返済義務は残りますので、十分な検討が必要です。
また、日本政策金融公庫以外の地域に密着した信用金庫などの金融機関や自治体が提供している創業融資では、「信用保証協会」を保証に入れるケースがありますので、そのような創業融資制度を検討してみるのもひとつの手段です。
本記事では、無担保・無保証の創業融資制度である日本政策金融公庫の新規開業資金で、自己資金なしで融資を受けることができるのか、自己資金はどの程度あればいいかなどを解説しました。
自己資金なしは、創業融資の審査に通らない可能性が高いとは言え、大切なのは、事業や必要資金などをまとめた創業計画書・事業計画書の中身です。
開業資金として必要な総額は適切な金額か、自己資金は最大限用意できているか、開業後のターゲットや売上計画は根拠に基づいた積算であるか、それらの売上が入金するまでの支払サイトから当面の必要運転資金を算出できているか、など綿密な計画や根拠が必要となるのが創業計画書・事業計画書です。
創業融資てづくり専門支援センターでは、これまで500件以上の創業融資サポート・創業計画書・事業計画書の作成実績があり、その経験とノウハウを背景に、成功報酬%なしの固定料金にて対応させていただいておりますので、創業融資に興味があったり、資金調達や開業資金に悩まれている方は、お気軽にお問い合わせください。
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