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日本政策金融公庫の創業融資は、民間の金融機関などに比べると審査が通りやすいという特徴がありますが、それでも申し込みをした人全員が融資を受けられるわけではなく、一定数は審査の段階で落とされてしまいます。
そこで今回は、創業融資で審査落ちする理由や審査落ちした後の対策について解説していきます。
創業融資の審査は、主に「事業の実現可能性があるか」「返済能力があるか」をポイントに判断され、これらが認められない場合は審査落ちする可能性が高くなります。
それでは、どのような場合に、事業の実現可能性や返済能力が低いと評価され、審査落ちに繋がってしまうのか具体的な理由を順に確認していきましょう。
創業融資の審査に落ちる理由としてよくあるパターンが「自己資金が不足している」というものです。
自己資金が少ないと、創業に対する計画性や責任感、熱意に欠けていると判断されやすく、資金の工面を融資に依存していると見なされることから、審査で落ちてしまう可能性が高くなる傾向があります。
現状の日本政策金融公庫の創業融資においては、自己資金の有無は要件で定められてはいませんが、これまでの実績から見ると創業資金総額の1/3~1/4程度の自己資金があることが望ましい、という状況になっています。
逆を言えば、計画的に貯蓄を行って自己資金を多めに準備できてさえいれば、創業への熱意をアピールしやすい部分でもあります。
そのため、審査落ちしないようにするためには、自己資金が不足している状態での無理な申し込みはせず、まずは着実に自己資金を積み上げ、その自己資金に見合った規模の事業計画を立てた上で創業融資に申し込むことが重要です。
※自己資金の詳細についてはこちらの記事もご覧ください。
<自己資金なしで創業融資を受けることはできるのか解説>
創業する業種に関する経験やスキルが乏しい場合は、創業融資の審査マイナス評価を受ける要因となり得ます。
これは、その業種での経験や知識、ノウハウがないと事業の成功に不安が生じ、返済が滞るリスクが高いと判断されることが多いためです。
実際に日本政策金融公庫の調査でも「元々事業経験のある創業者の方が、そうでない場合よりも成功確率が高くなるケースが多い」と示されているため、審査においてもこの点は重要な要素となっています。
業界での経験がない場合は、アルバイトでも構いませんので創業する業種の仕事に従事してみたり、自分の代わりに経験者を雇用するなど、審査落ちを防ぐための工夫をする必要があります。
※未経験の業種で創業融資を申し込む場合のポイントに関しては、以下の記事も併せてご覧ください。
<【創業融資】未経験の業種で成功させるポイントを行政書士が解説>
審査においては申込者の信用情報(ローンやクレジットカードの利用状況など)も確認されます。
信用情報から、度重なる返済の滞納や債務整理、自己破産など事故情報の履歴が見つかった場合は、審査落ちする可能性が非常に高くなります。
信用情報に登録された事故情報は一部を除き基本的に5〜7年程度保存されますので、この情報が消えるまでは創業融資の申し込みを控えるのが賢明と言えます。
自分の信用情報がどうなっているか心配な場合は確認することも可能です。
※信用情報の確認方法や詳細を知りたい方は以下の記事もご覧ください。
<信用情報とは?創業融資における影響を解説>
創業計画書・事業計画書の内容に妥当性や整合性が欠けているというケースも、審査落ちの要因の一つです。
事業の計画とその実現可能性や、貸し出した融資金が妥当であるかなどを判断する材料になるのが創業計画書・事業計画書です。
そのため、創業融資を受けるためには、裏付けある根拠と現実的な数値や見通しに基づいて、整合性のある創業計画書・事業計画書が不可欠と言えます。
※創業計画書の詳細は以下の記事もご覧ください。
<創業計画書とは?日本政策金融公庫の創業計画書のポイントを解説>
創業時には物件取得費用、設備投資費、仕入れ代、当面の運転資金など様々な資金が必要となります。
しかし、資金使途や金額が妥当ではない場合は、事業の計画性や実現可能性に対して疑念が生まれ、審査落ちに繋がる可能性があります。
資金使途や金額の妥当性は創業融資の審査に際して核となる項目ですので、どのような理由で何にいくら必要なのか、その詳細をきちんと説明できるようにすることが重要です。
事業に必要な資格や許認可を取得していない場合も、審査落ちの要因になる恐れがあります。
業種によっては、営業を始めるために特定の許認可や資格を求められることがあり、例えば飲食業であれば衛生管理者の資格や営業許可の取得が必要です。
これらを対応できていない場合は、創業後に事業運営を適法に行わないという可能性が残ることから、創業融資を受けられない可能性が高くなります。
特に日本政策金融公庫は政府系の金融機関のため、法的に問題なく事業経営できるかという点も重要視しており、資格や許認可については厳密にチェックされます。
そのため、創業融資を申し込む前に「自社・自店の場合はどのような資格や許認可が必要か」といった点を確認し、それらをしっかり取得しておくことが大切です。
審査を通過するためには、審査落ちする理由と逆の対応を取っていくことが近道です。
例えば、
■自己資金を十分に用意する
■創業する業種での経験をアピールする
■信用情報にキズが付かないよう、日ごろから支払いの遅れは無いよう気を付ける
■創業計画書・事業計画書をしっかり作りこむ
■資金使途を明確にし、金額も妥当な内容にする
■必要な資格や許認可を事前に取得しておく
といった対応で、審査に通過する可能性を高めることができます。
「せっかく創業融資に申し込むので、少しでも審査落ちする確率を下げたい!」という方はぜひ上記を参考にしてください。
ここからは、残念ながら創業融資で審査落ちしてしまった場合の対策を解説していきます。
「今回はダメだったが、いずれまた創業融資を申し込みたい」と考えている場合は、審査落ちした原因を分析し、対策を講じることが大切です。
審査に落ちた場合は、「自己資金面」「事業経験面」「創業計画書や事業計画書の内容」「信用情報」など何らかの理由があるということです。
日本政策金融公庫をはじめとした金融機関は審査落ちした理由を開示してくれないことも多いため、自分で面談の内容なども含め振り返って分析する必要があります。
審査に落ちた原因がわからないまま再申し込みをしても、審査落ちを繰り返す可能性が高いため、改善すべき点を洗い出し、再申し込みの際は問題が解消されたことを示せるような資料などを用意してから臨むようにしましょう。
創業融資で審査に通らなかった場合、すぐに再申し込みしたいと考える方もいるかもしれませんが、審査落ちしてから再申し込みまでは最低でも半年ほどの期間を空けた方が良いとされています。
これは、審査落ちした主な理由は短期間では解決しにくい課題であることが多く、半年以内に審査落ちの理由が改善されていない状態で再申し込みをしても、同じように審査に通らない可能性が高いからです。
この期間を活用して数値計画の再分析や、自己資金の貯蓄、事業経験やナレッジの蓄積など、問題点の改善と実績作りに注力し、再申し込みに向けて準備を整えていきましょう。
創業融資で審査落ちしてしまった場合は、他の資金調達方法を検討してみるのも一つの手段です。
創業融資以外の資金調達方法も様々なものがありますが、当センターがおすすめさせていただいているものとしては「補助金の活用」があり、その中でもお客様からご利用いただくことが多い補助金制度は以下となります。
■小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、販路拡大や業務効率の向上を目指す小規模事業者を支援するための補助金です。
補助金額に関しては、スタンダードな通常枠で上限50万円(補助率2/3)となっており、例えば75万円の経費をかけた場合は50万円が補助され、実質25万円の負担で済むという仕組みです。
昨今、小規模事業者は法改正や最低賃金の引き上げ、インボイス制度への対応など事業環境の変化が重なり、販路拡大に十分な予算を割く余裕が無い状況が続いています。
このような状況下でも、この補助金を活用することで販路開拓やデジタル化といった取り組みを少ない資金で進めることができるようになります。
※持続化補助金に興味がある方は、こちらの記事もご覧ください。
<小規模事業者持続化補助金一般型>
■IT導入補助金
IT導入補助金は、業務のデジタル化や効率化を進め、労働生産性の向上を実現するために、中小企業や小規模事業者のITツール導入を支援する補助金制度です。
補助対象となるのは事務局の審査に通過し、あらかじめ登録されたITツールです。
また、申請はIT導入支援事業者(ITツールを販売するベンダー・サービス事業者)と共同で行う必要があり、このIT導入支援事業者についても事前に事務局の審査を受け、登録されている業者に限られています。
このような仕組みで運営されているIT導入補助金は、5つの申請枠/類型が用意されており、補助額は最大450万円まで、補助率も1/2~4/5と高めに設定されています。
ただし、IT導入補助金は申請時に納税証明書の提出が必要となりますので、初年度の納税を迎えていない段階は申請することができません。
※補助金の情報サイトも別途運営していますので、詳しくはこちらもご確認ください。
<IT導入補助金の解説>
<持続化補助金の解説>
「創業融資で審査落ちしてしまったので、次の申し込みでしっかり融資を受けたい」という方は、行政書士をはじめとした創業融資の専門家のサポートを活用するのも効果的です。
創業融資に関する豊富な経験と高い知見を有する専門家のサポートの活用は、
■自分だけでは対応が難しい部分まで客観的なアドバイスをしてもらえる
■現実的な売上や収支計画を考えてもらえる
■審査通過のポイントを押さえた創業計画書・事業計画書の作成をサポートしてもらえる
■面談対策を行ってもらえる
など様々なメリットがあり、審査の通過率が高まります。
極力審査落ちを避けたいという方は、専門家の力を借りることも検討してみてください。
※専門家のサポート活用のメリットや詳細はこちらの記事もご覧ください。
<創業融資の代行やサポート活用のメリット・ポイントを解説>
本記事では、日本政策金融公庫の創業融資で審査落ちしてしまう理由や、その後の対策などについて解説しました。
「せっかく手間暇をかけて創業融資に申し込むからには、少しでも審査落ちする確率を下げたい」という方は、ぜひ今回解説した点を踏まえて申し込みの準備をしてみてください。
創業融資てづくり専門支援センターでは、これまで4,500件以上の創業融資サポート・創業計画書・事業計画書の作成を支援してきた実績と積み重ねたノウハウを活かし、着手金なしの完全成功報酬(一律固定)にてサービスを提供しています。
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