事業計画書は、使用する場面や目的に応じて作り方が変わります。
それは、説明する相手(自分)に対して求める内容が変わるため、使用する目的に応じて事業計画書(創業計画書)の書き方を考えて作成していきます。
・起業・創業時の開業資金・創業資金の融資を受けるための事業計画書(創業計画書)
・スポンサー・出資者・ベンチャーキャピタルから出資を受けるための事業計画書
・事業の協力者や従業員の賛同を受けるための事業計画書
・新規取引先・既存取引先に向けての事業計画書
・行政や地方自治体に向けての事業計画書
・自分自身に向けての事業計画書
・社内の新規事業・ベンチャー事業を立ち上げる際の社内向け・社長向けの事業計画書など
使用目的は様々ありますので、それぞれに応じて書き方や作成内容も変わってきます。
①基本は結論から書いて理由を書く
「店舗の強みは、コンテストで入賞したスタイリストがいることです。(結論)
このコンテストは毎年行われているもので、入賞するとそのスタイリスト目当てに予約が殺到し人気店となるからです。(理由)」
事業計画書の書き方のポイントとしては、このようになるべく言いたい事を先に述べてから、理由や根拠を書いていきます。
②1文章の中で違う内容や目的は入れず、1文章=1つの事で完結する
「メインサービスは、草木染めのカラーです。」→◌
「メインサービスは、草木染めと他には香草カラーです」→×
ご自身では、事業のメインメニューとして複数を認識していることが多いかもしれませんが、「メイン」と表現するのであれば1つが一般的な認識です。
上記の場合だとメインが「草木染め」であれば、メイン=草木染め、サブ=香草カラーのような書き方にすることで事業計画書の読み手側も理解しやすくなります。
以上の2つを念頭に置いた書き方をするだけでも、整合性が高い文章となります。
ここからは日本政策金融公庫の創業融資を受ける時に作成する事業計画書(創業計画書)の書き方やポイントについて紹介します。
まずはじめに、事業計画書(創業計画書)は以下の項目構成となっています。
・創業の動機
・経営者の略歴
・過去の事業経験
・取扱商品・サービス
・セールスポイント
・取引先・取引関係、従業員
・借入の状況
・必要資金と調達方法(設備資金、運転資金、自己資金、借入内訳等)
・事業の見通し(創業当初、軌道に乗った後、売上高、原価、経費、利益、その計算された根拠等)
以下の文章の○○○○に言葉を入れて文章を作って下さい。
「創業の動機は、お好み焼き屋を今まで○○○勤めていましたが、○○○○近辺でまだ同業種のお好み焼き屋がなかったため、その○○○○でお好み焼きの素晴らしい味を○○○もらいたいという○○があり、今回創業したいと考えました」
文章がうまくつながり、読み手側に「なるほど、そういう事で創業したいんだな」と感じてもらえれば創業の動機の書き方として十分成り立ちます。
創業の動機は自由であるものの、一連のつながりがある内容で構成する書き方で考えて下さい。
アパレルを起業・創業する場合の記入例
~○○高校、~大学 ○○学科 卒業
アパレル(アルバイト)販売:2年
WEB制作会社(社員)WEB制作:5年
アパレル(社員)企画:3年
経営者の略歴については、今までの経歴を書くことになりますが、ポイントとしては、経歴を見て単に、頭が良い・悪い、すごい仕事をした・していないなどを見るだけではなく、「起業・創業する事業」とどれだけ関係した経験をしきたのかを判断するものでもあります。
一般的に成功しそうと考えられる起業・創業は「今まで経験してきた実績やノウハウをもって、同業種で違う場所で独立する」であったり、「今まで経験してきた実績やノウハウで、同業種でも新たな仕組みやアイデアを持って差別化した事業で独立する」というものであったりします。
もちろん、融資を受けるために「こうでなければならない」という事はありませんが、自分自身の事業モデルを客観的に見た場合に、自分が事業計画書の読み手側だったらどう感じるかを考えた書き方をするとより理解できます。
ペットサロンを起業・創業する場合の記入例
①シャンプー (売上シェア○○%)
②カット (売上シェア○○%)
③ペットホテル (売上シェア○○%)
売上シェアの比率を何%にするか考えてみて下さい。
事業を行っていく場合は、1つのメニュー構成だけではなく、たいていの場合は複数のサービスやメニューを展開していくことになりますが、各売上シェアの割合を計算する事は重要です。
メインサービスとその他のサービスの比率が似たような数値になるのであれば、果たしてそれはメインになるのでしょうか?
看板には「ペットサロン」とあったとしても、売上シェアが同じような比率の計画であれば、もしかするとお客様から見た場合、結局ここは何をやっている店舗なのかがわからないかもしれません。
もちろん売上シェアは単価、稼働率、回転数であったりと業種によって計算方法は違いますが、ご自身の事業の売上比率を計算して見てみると、そこに事業モデルの改善点が見えるかもしれません。
事業計画書も同様で、読み手側にはっきりと事業のメイン商品・サービスはどういったものなのかが伝わり、理解してもらえるような書き方が重要となります。
エステサロンを起業・創業する場合の記入例
「友人・知り合いで既に○○人の来店・顧客化が見込めており、売上の○割を確保できる見通しになっています。
また、立地においては○○代の○○が多いため、○○に合わせたサービスを提供して、お客様に対する付加価値の提案を行っていきます。」
上記の○○○に当てはめる言葉の正解はありませんが、その事業の強みがはっきりとわかるようにする内容で考えてみて下さい。
また、単に新しいアイデアであればセールスポイントになるというわけではなく、今までの経験から導き出されたものであったり、エステサロン業界の課題に対する改善であったりすると、大きなセールスポイントとして読み手側に伝わります。
業界の課題は顧客に求められている、必要になる事も多くあります。
それが顧客に選ばれる理由にもなりますので、その点もはっきりわかるように事業計画書の書き方を工夫して下さい。
美容室を起業・創業する場合の記入例
「ターゲットは20代後半から40代を中心とした会社勤めの女性となり、インターネットを活用したプロモーションやクーポンを利用して集客します」
業態によってターゲットは異なりますので、ご自身の事業内容に応じて、明確にターゲットを記載します。
さらに、そのターゲットに対しての販売戦略・プロモーションとして、どのような取り組みを計画しているかを明確に記載する事が事業計画書のポイントとなります。
販売戦略やプロモーションの取り組みがあいまいのままであると、ターゲットに対して売上が見込めるのかわからなくなってしまうため、計画性を持って取り組みをアピールする事が重要です。
スクール・教室を起業・創業する場合の記入例
「教室を構える○○地域において、競合店舗は○○○○、○○○○が挙げられ、○○○○に特徴がある教室が多くありますが、価格・料金が相場と比較して高い傾向にあります。また、○○○○地域は再開発計画が進行しており、毎年○○○○人の人口増加傾向にあるため、競合教室に対して差別化を実施する事でシェアを獲得し続ける事が見込めます。」
事業の商圏の設定にもよりますが、顧客に対して競争環境にある他社状況を把握し、その競合に対してどのように差別化した取り組みが出来るのかをアピールする事が重要なポイントになります。
また、ターゲットとなる顧客・ユーザー等が今後どのように拡大していくのか、シェアを獲得し続ける事が可能なのかも明確にしておく事も重要となります。
販売先:○○○○
シェア:○○%
掛取引:○○%
回収・支払の条件:末〆 翌月25日回収
販売先との取引の内容を示す内容になります。
売上全体に対するシェアが大きければ大きいほど、メイン取引先となりますが、その分依存度も高くなるため、1年後、2年後先を見た場合の事業の安定度を見る指標にもなったりします。
メインの取引先、安定した受注先がある事は良い事ですが、事業の安定度も考えた場合にはどれくらいの依存度になるのかも計画しておく必要があります。
他にも仕入先や外注先を記載する欄もあります。
これも同様の考え方になりますが、業種によっては仕入先への依存度や掛割合(買掛)と販売先の掛割合(売掛)の期間のズレ等は事業の資金繰りに大きく影響します。
この要素を重点的に考慮した事業計画書の書き方をすることでより資金が回ることが読み手に伝わる事業計画書になります。
整骨院を起業・創業する場合の記入例
【必要な資金】
■設備資金:200万円
(内訳)
○○取得費 見積り先:○○○○ 35万円
事務所設備費 見積り先:○○○○ ○○○万円
○○費:見積り先:○○○○ 27万円
○○治療機器 見積り先:○○○○ ○○万円
事業開始前に必要となる設備面の資金の内訳を表す書き方をします。
なんでも記載しておくのが良いわけではなく、その事業の運営を行うために必要不可欠なものを記載します。
そのため、事業内容や販売・営業計画なども大きく影響してきますので、事業の計画を考えて必要資金を割り出してから書き出していきます。
■運転資金:80万円
(内訳)
人件費:○○万円
○○費:25万円
広告費:○○万円
運転資金は、日本政策金融公庫の創業融資の場合、事業開始後から「損益分岐点に達するまでに必要な資金」という考え方になります。
どの項目で申請するのかは事業の内容によりますが、「融資を受ける」事を前提に考えた場合は、絶対不可欠な項目を中心とした構成の書き方をします。
【調達の方法】
■自己資金:○○○万円
自己資金がいくらあるのかを記載します。
創業融資は事業を始める方に向けた融資ではありますが、自己資金がない状態で融資されるものではありません。
その事業への本気度=自己資金という見方もあります。
特に起業・創業時は自己資金の問題が多く見受けられます。
また、よく勘違いされるのが、他からの借入も自己資金と認識してしまう事です。
自己資金の定義は返済の必要がないお金=借入ではない事になりますので、ここは注意するようにして下さい。
※自己資金の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
<自己資金なしで創業融資を受けることはできるのか解説!>
■親、兄弟、知人、友人等からの借入:0万円
借入はなければ0の記載で問題はありません。
他からの借入はないに越した事はありませんが、事業の規模が大きい、必要な資金が大きいので他からの借入も必要となる場合もありますので、必要に応じた書き方をして下さい。
■日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入:○○万円
これは日本政策金融公庫へ借入をする予定の金額を記載します。
■他からの金融機関等からの借入:0万円
これもないに越した事はありませんが、親や兄弟からの借入と考え方は同じです。
必要な資金と調達の方法の合計額の確認
ここまでの数字が記載できると、表の左側の必要な資金の合計額と表の右側の調達の方法の合計額が一緒になります。
逆に一緒にならない場合は、記入漏れや金額の計算間違いなどが考えられますので、チェック、再計算して一緒になるようにして下さい。
このように計画に必要な資金内訳・使途がわかるような事業計画書の書き方をします。
ネットショップを起業・創業する場合の記入例
【創業当初】
売上高:30万円
売上原価:○○万円
人件費:○○万円
家賃:5万円
支払利息:0万円
その他:○○万円
経費合計:30万円
利益:-12万円
項目に沿って記載していきます。
利益は売上高-売上原価-経費合計で計算します。
開業1ヶ月目から黒字になる事が理想ではありますが、なかなそうはならない事がほとんどです。
ここは強気の計画よりも現実的な計画値のほうが、より事業の成功を考えていると認識される傾向があります。
また、個人事業主の場合は、損益計算に事業主分の人件費は入らないので、最終的に残る利益とは別に個人の生活費も考えて計算した書き方をします。
【軌道に乗った後】
(○○年○○月頃)
売上高:170万円
売上原価:85万円
人件費:○○万円
家賃:5万円
支払利息:0万円
その他:○○万円
経費合計:30万円
利益:55万円
軌道に乗った後=損益分岐点を超えた時がわかるような書き方で、軌道に乗る月数も記載します。
そうすることで、事業開始月から軌道に乗るまでの必要資金が計算できます。
また、個人事業主は事業主分の人件費は入らないため、生活に必要なお金と国民保険、国民年金保険、その他必要なお金と所得税などの税金面も別途計算し、損益計画を立てて計算した事業計画書の書き方をします。
根拠は文章で書くのではなく、端的に計算式やその計算に使用した数字的根拠を持った書き方をします。
■売上高:○○○万円
売上を導き出す計算式で売上を書きます。
通常は提供する商品・サービスごとに全ての売上を計算してから、個数・顧客数(回転数)などで割って平均単価等を導き出していきます。
商品・サービス価格ももちろんですが、個数・顧客数(回転数)も可能な限り根拠を持って計画するようにして下さい。
また、事業内容によっては、稼働率を計算して売上根拠とした書き方をします。
■売上原価:○○万円
売上原価は、商品やサービスに固定で必ずかかる費用を計算して書きます。
売上原価に該当するものは仕入価格、仕入に必要な費用、サービスを提供する際に固定でかかる費用などが挙げられます。
また、原価率を何%にするかはその事業に応じて変わります。
妥当なラインに原価率を落とす工夫、売上単価を上げる事も考えてみて下さい。
■人件費:○万円
従業員を雇用して支払う費用を書きます。
法人の場合は事業主分の人件費(役員報酬)も計算に入れますが、個人事業主の場合は事業主分の人件費は入りません。
他にも、従業員を雇用する場合は労働保険の計算、法人は社会保険等の計算も組み入れます。
個人事業主の場合でも5人以上の従業員を雇用する場合は業種に応じて社会保険等の計算も組み入れます。
■家賃:○万円
使用する事務所や店舗の家賃を記載します。
自宅兼事務所、自宅兼サロンなどの場合は、事業用で使用する按分で費用の計算を行います。
■支払利息:○○○万×○.○%÷12ヶ月
支払利息は、借り入れる資金(元金)×利息(%)÷12ヶ月で月間必要な支払利息のおおよその金額を計算しておきます。
日本政策金融公庫の場合は、妥当な制度が適用された場合の利息となりますので、計算時には適用が予想される制度の利息で計算しておきます。
■その他:○万円
売上原価、人件費、家賃、支払利息に該当しない経費をまとめて計算して記載します。
主だったものとしては、水道光熱費、交通費、通信費、消耗品費、広告宣伝費、交際費、顧問料、コンサルタント費用などが挙げられますが、事業に必要な勘定項目があれば、計算に組み入れます。
日本政策金融公庫の創業融資の事業計画書(創業計画書)は日本政策金融公庫のホームページでフォーマットが配信されています。
このフォーマット通りに記載しても良いのですが、その項目に沿った書き方だけだと、「ここをもっとアピールしたいのに」「この部分は必要ないのか」など疑問や不安が出てきます。
そういった部分は是非別資料を作成して添付で提出するようにして下さい。
事業の魅力や良さをもっとアピールできる事業計画書の書き方が必要となります。
事業の良さ=量ではありませんが、最低限の量はやはり必要です。
そして、追加で資料を作っていくとまた新たな疑問もたくさん出てきます。
その疑問に対して答えを出す事によって、更に事業計画書(創業計画書)の精度が増し、より成功する事業にも近づいていく事になります。
一旦、事業計画書を作成してから客観的にその内容を確認すると、まだまだ煮詰められる部分や書き方を多く発見できるかと思います。
当センターでは、これまで500件以上の創業融資サポート・創業計画書・事業計画書の作成実績があり、その経験とノウハウを背景に、成功報酬%なしの固定料金にて対応させていただいておりますので、事業計画書や創業計画書の作成代行やサポートの依頼を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。
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『 1000万円の創業融資の支援を成功報酬なしの一律料金でサポート 』
① 日本政策金融公庫の融資
② 創業融資支援の成功報酬はないのでしょうか?
③ 1000万円程の創業融資を受ける事は可能でしょうか?
④ 開業計画書を考える4つの視点
⑤ 開業時は日本政策金融公庫と銀行どちらが融資を受けやすいのでしょうか?
① 起業する前に知っておきたい21の知識
② 新規事業を成功へと導く立ち上げ時に検討すべき8つの思考
③ 資金調達を計画する時に知っておきたい考え方
④ 事業計画作成において把握しておきたい必要ポイント
⑤ 業界別の創業融資や事業計画書作成のサポート
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